胃潰瘍・十二指腸潰瘍

胃潰瘍

胃潰瘍とは

胃痛「潰瘍」とは、皮膚や粘膜などに生じる組織の損傷です。胃潰瘍は、胃の粘膜が胃酸に含まれる塩酸やペプシンによって、損傷を受けることで発生します。これは「消化性潰瘍」とも称されます。
かつては男性に多いとされた胃潰瘍ですが、現在では更年期を迎える女性にも増加傾向にあります。さらに、若年層の患者様の増加もみられ、発症原因は多岐に渡ります。

胃潰瘍の原因

ストレス

ストレスが胃潰瘍の原因となることがあります。細かいことにこだわる性格や、問題を1人で抱え込む傾向のある方は、ストレスのコントロールを意識しましょう。また、過重労働や睡眠不足といった身体的なストレスも、胃潰瘍を引き起こす要因です。特に、強いストレスは急性胃潰瘍の発症リスクを高めるため、要注意です。

ピロリ菌の感染

ピロリ菌イメージピロリ菌感染による胃潰瘍は、胃潰瘍全体の70%以上を占めています。
ピロリ菌は慢性胃炎を引き起こし、放っておくと慢性胃潰瘍に進行してしまいます。除菌治療で改善できますので、症状がみられたら早期の受診をお勧めします。1〜2週間ほど治療を続けると、改善していきます。

嗜好品

香辛料が多い食品を頻繁に摂取すると、胃への負担が大きくなります。コーヒーも同様に、摂りすぎには気を付けましょう。また、極端に熱い(冷たい)飲食物も胃にはよくありません。好みに関わらず、適量を守ることが重要です。

薬の長期使用

長期間に渡る強力な薬の使用は、胃潰瘍を引き起こす要因になります。特に、腰痛や膝痛、関節リウマチの治療に用いられる非ステロイド系消炎鎮痛薬は、胃腸の粘膜を傷つける副作用があるため、注意が必要です。
どの薬にも副作用は伴うため、自己判断で飲み続けることは避けましょう。医師の指示に従って、適切に使用しましょう。

喫煙・飲酒

喫煙は胃の血流を悪化させてしまいます。また、アルコールの過剰摂取も、胃に負担をかけるため、お酒は適量を心がけるようにしましょう。

不摂生・不規則な食生活

食べすぎ・飲みすぎ、早食いなどは、胃の機能に重荷をかけてしまいます。
食事の量や速度に注意し、就寝時間の3時間前には夕食を終わらせるようにしましょう。

胃潰瘍の症状

みぞおち辺りの腹痛

多くの患者様が、腹痛を主な自覚症状として訴えています。特に、みぞおち(お腹の上の中心部にある、くぼんだ部分)の痛みは、来院のきっかけとなることが多いです。食事中や食後に痛みが生じるケースが多く、食べ過ぎると痛みが持続することがあります。
※空腹時の腹痛が食事で和らぐ場合、十二指腸潰瘍の可能性があります。

腹痛の程度は、胃潰瘍の重症度と直接関係ありません。胃潰瘍があっても無症状の方もおり、逆に突然の激痛が起こり始めた段階では、すでに潰瘍が悪化していたという患者様も多くいます。少しでも症状が気になる場合は、早めの受診をお勧めします。

酸っぱいゲップ・胸やけ

胃潰瘍の際には、胸焼けや呑酸などの症状が現れることがあります。これらは胃酸の過剰分泌によるもので、胃液が食道へ逆流することで起こります。
また、胃潰瘍など胃の病気は、口臭を引き起こすことがあります。

吐き気・嘔吐

胃潰瘍が原因で胃液の分泌が増えると、胃の粘膜のバランスが崩れやすくなります。それにより、呑酸や胸焼け、吐き気、嘔吐などの症状が現れることがあります。

食欲不振、体重減少

胃の不調によって吐き気や嘔吐などが起こり、食欲不振に陥ることがあります。その結果、体重が減ってしまうケースもあります。

吐血・下血

潰瘍がある部分の血管が損傷すると、吐血・下血が起こる可能性があります。出血は激しい痛みを伴い、冷や汗や動悸、血圧の低下がみられることがあります。
胃酸によって変色した血液が、嘔吐により吐き出された吐血は黒褐色をしており、便と混ざって排出された血液はタールのように黒く濁ったタール便として排出されます。
吐血や下血は見逃されがちな症状ですが、特に下血は胃がん・大腸がんなど深刻な病気のサインとして起こるケースもあります。
大量の下血がある際は、迷わずすぐに受診してください。

背中の痛み

背中や腰辺りの痛みは、「ただの腰痛」と思われがちですが、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、膵炎、膵臓がんなどの症状として起こっているケースもあります。
急に症状が現れたり長引いたりしている場合は、安易にご自身で判断せず、診察を受けるようにしてください。

胃潰瘍の治療

初期治療では、医師の指導のもとでの薬物療法が行われます。適切な服薬方法を守ることが重要で、通常、2~3ヶ月の治療期間のうちに改善が見込まれます。
症状が改善しても、自己判断で治療を中止することは避けてください。再発のリスクに気を付けながら、治療を続けていきましょう。
生活習慣の改善も再発予防において重要です。ストレスが多い生活は胃への負担を増やし、病気の再発を促す可能性があるため、ストレスを適切に管理し、休息を取ることを心がけましょう。適切な睡眠を確保することも、健康維持には不可欠です。

そして、香辛料、甘味料、脂肪分が多い食品、アルコールは、適量を心がけながら楽しむことが大切です。
喫煙習慣がある方は、喫煙量を減らすこともお勧めします。特に胃潰瘍の経験がある方は、禁煙を検討することが望ましいです。

十二指腸潰瘍

十二指腸潰瘍とは

十二指腸は、胃と小腸を繋ぐ消化器官です。十二指腸潰瘍とは、胃酸によって十二指腸の粘膜が損傷し、炎症を引き起こす病気です。
潰瘍が進行すると、潰瘍からの出血が見られる出血性十二指腸潰瘍を起こします。激痛の他に、吐血や下血が見られることがあります。また、十二指腸潰瘍穿孔という重篤な状態に至る危険性もあります。
十二指腸の形状が潰瘍によって変わることもあり、繰り返し再発すると十二指腸が狭窄し、食物の通過障害を生じる危険性があります。

十二指腸潰瘍の症状

みぞおちや上腹部の痛み

特に、空腹時や初期段階の時に、痛みを感じることがよくあります。

背中の痛み

十二指腸が体の背面にあるため、背部痛が起こることもあります。

吐き気や嘔吐

吐き気や嘔吐を伴っていなくても、不快感が起こることがよくあります。

タール便

潰瘍の一部からの出血により、血液の鉄分が反応して黒く濁った便が排出されることがあります。

十二指腸潰瘍の原因

通常、胃粘膜の防御機能によって、胃壁は守られており、胃と十二指腸はこの粘液の防御により、胃酸のダメージから守られています。
しかし、ピロリ菌などの因子によってこの防御が機能しなくなると、胃粘膜が胃酸によって損傷してしまいます。その結果、炎症を引き起こし、十二指腸潰瘍になります。

十二指腸潰瘍の検査

胃カメラ検査

 

胃カメラ検査は、胃や十二指腸、食道の粘膜を詳細にチェックできます。傷の深さや潰瘍、炎症の進行度合い、周辺組織の状態などを細かく確認し、疑わしい病変組織を採取して病理検査を行うことも可能です。出血がある場合は、内視鏡で止血処置も行えます。さらに、ピロリ菌感染の有無や他の消化器疾患との区別もできます。

胃カメラ検査はこちら

ピロリ菌検査

胃カメラ検査以外にも、ピロリ菌の感染有無を確認するための方法はいくつかあります。例えば、便中抗原検査、血液抗体検査、尿中抗体検査、尿素呼気検査などがあります。

ピロリ菌はこちら

十二指腸潰瘍の治療

服薬イメージ治療には制酸薬や粘膜保護薬などを用いた薬物療法が行われます。
ピロリ菌が原因の場合は、除菌により潰瘍の再発を防止できます。痛み止め薬の使用が原因だった場合は、薬を変えることもあります。制酸薬や粘膜保護剤の併用も、治療に有効とされています。