慢性胃炎

慢性胃炎とは

胃痛イメージ胃炎は、炎症がどれくらい続いているかによって急性と慢性に分けられます。一般的に言われる胃炎は、慢性胃炎を指しています。
今まで慢性胃炎は、3つのタイプの胃炎をひとまとめにして治療されてきました。1つ目は、病理学的な組織検査で診断がついた「組織学的胃炎」で、2つ目は胃レントゲンや胃カメラ検査でびらん・萎縮・過形成などが発見された「形態学的胃炎」です。そして3つ目は、これらの検査で特定の所見がないのにも関わらず胃もたれ・胃の痛み・膨満感などがある「症候性胃炎」です。
欧米では、胃カメラなどの検査で異常がなく、かつ上腹部の消化器症状が見られるものを機能性ディスペプシア(FD:Functional Dyspepsia)と診断し、慢性胃炎とは別物とみなしています。現在、慢性胃炎は欧米と同じように、組織学的胃炎を指すことが多いです。

慢性胃炎の頻度

慢性胃炎の原因のほとんどはピロリ菌の感染です。ピロリ菌の感染率は年齢とともに増加する傾向があり、50代では約40~50%、60代で60%、70代では70%以上の方にみられます。
そして、ピロリ菌感染に次いで多い要因が加齢によるものです。

慢性胃炎の原因

ピロリ菌イメージ慢性胃炎は、胃の粘膜が繰り返し傷つき、それが長期間続くことによって発症します。主な原因はピロリ菌で、ピロリ菌の発見をきっかけに、慢性胃炎とピロリ菌には大きな関係性があることが判明しました。
加えて、サイトメガロウイルスの感染や、消炎鎮痛剤の長期使用、自己免疫性胃炎(A型)、クローン病などの自己免疫疾患、肝硬変や腎不全などの栄養や代謝に関わる基礎疾患も、慢性胃炎の原因となり得ます。
日常生活においては、刺激の強い食品、香辛料や塩分の過剰摂取、喫煙、不規則な食生活も、慢性胃炎を引き起こす要因とされています。

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慢性胃炎の症状

胃粘膜が弱ることで、胃痛や胃の不快感などの症状が起こります。また、胃の運動機能が低下したり胃酸が減少したりすることで消化不良が生じ、胃もたれ、げっぷ、胸やけ、膨満感、食欲不振などの症状が現れることもあります。
普段は自覚症状がなく、健康診断やご家族の勧めで検査を受けた際に、慢性胃炎であることが判明するケースもあります。

慢性胃炎の診断と治療

診断

胃カメラや胃X線検査などのような、画像を見ることで病気の有無が分かる検査が行われますが、最終的には、病理組織検査を行います。
ピロリ菌感染や急性胃炎、胃潰瘍、胃がんなどとの区別は、症状だけで行うのが難しいため、通常は胃カメラ検査が実施されます。この検査では、胃粘膜の状態や色を詳細に観察し、必要に応じて胃の組織を採取します。病理組織検査では、ピロリ菌やがんが無いかを調べることが可能です。
また、ピロリ菌による炎症が進んでいないか、萎縮や腸上皮化生変化が起きていないかも丁寧に調べ、正確な診断と治療計画の策定に役立てていきます。

治療

ピロリ菌に感染していても症状がなく、慢性胃炎のみが確認されることがあります。診断では、まずピロリ菌に感染しているかどうかを確かめ、感染が確認できた時に除菌治療を行います。除菌治療は薬物療法で行われ、約90%の確率で成功します。
ピロリ菌による慢性胃炎ですと、現在、胃粘膜を完全に元通りにする治療法は存在しません。

症状のない慢性胃炎

治療は通常必要ありませんが、胃がんの早期発見のためにも、胃カメラ検査を定期的に受けて胃粘膜の萎縮や腸上皮化生が進んでいないかをチェックしましょう。
萎縮性胃炎が局所的に起こっている場合は、治療は不要です。その場合は経過観察を行います。ただし、胃体部にまで萎縮がみられる場合は、定期的に胃カメラ検査を受けて胃がんの早期発見に努めましょう。

症状のある慢性胃炎

アルコールやブラックコーヒー、辛い食べ物、刺激の強い食品、肉類、揚げ物など、消化に負担をかける食事を控えることが重要です。
当院では、患者様の食生活の改善に向けた指導を行っています。薬物治療には、胃酸の分泌を抑制する薬、胃粘膜を保護する薬、胃の運動機能を調整する薬、漢方薬などがあり、これらを症状に応じて組み合わせて治療を進めます。

慢性胃炎の経過、予後

慢性胃炎は加齢とともに発症しやすくなる病気です。通常は発症しても、予後に大きな影響を与える病気ではありません。しかし、ヘリコバクター・ピロリ菌に感染している場合、将来的に胃潰瘍や胃がんを引き起こすリスクが高まることが判明しています。慢性胃炎を健康な胃粘膜に完全に戻すことは難しいですが、ピロリ菌の除菌治療により、慢性活動性胃炎の進行を食い止め、胃潰瘍や胃がんのリスクを減らすことは可能です。
除菌治療は胃潰瘍の再発を防ぐことにも有効とされますが、胃がんの発症を完全に防ぐわけではありません。
胃がんの早期発見には、年に1回の定期的な胃カメラ検査が非常に有効です。